介護施設で週1回、歯科衛生士さんが歯磨き指導をした方々と、本人ないし介護者が歯磨きした方々とを比較すると、そのシーズンのインフルエンザ発生率が10分の1になったという研究があります。歯磨き(機械的除去)スポンジブラシや、やわらかい歯ブラシで歯の表面の歯垢を除去する方法を、プロフェッショナルから教わり、正しく実行することが大事なのかもしれません。
うがい薬の代表として、ポピドンヨード(例「イソジン」)やクロルヘキシジン(例 「コンクールF」)などの殺菌性の消毒剤があります。これらの消毒薬は、口腔内に蛋白質などがあると、消毒効果を十分発揮できません。とにかく大事なことは口腔内の清潔です。まず歯磨きなどで食物残渣(しょくもつざんさ)等の異物を除去することで最大効果を発揮します。
また意外に思われるかもしれませんが、イソジンやクロルヘキシジンなどで毎日うがいをしても、インフルエンザ予防は困難です。なぜならば、気道粘膜にくっついたインフルエンザなどのウイルスは、数十分で粘膜細胞内に入り込みます。細胞内には消毒薬の効果は及びません。30分に1回、1日中やっていればひょっとしたら効果があるかもしれませんが、そんなことは誰もしません。
うがいだけをしていてもインフルエンザ予防にはなりません。もちろんそれがカテキンであっても・・・。うがいは咽頭痛など症状があるときに、常在細菌叢(じょうざいさいきんそう)を整えることで効果を発揮します。もちろん口臭予防もあります。
正しい歯磨きと上手なうがいで口腔を清く保ち、健康で爽やかな年末をお過ごしください。
2014年12月15日
小児集中治療科副部長 笠井 正志
この記事は過去に市民タイムスで紹介されたものです。特別に許可を得て掲載しています。(一部改編)