赤い屋根通信

第14回 ボウフラも輸出?!~デング熱の話~

昨年、70年ぶりにデング熱の国内発症例の報告があったことを受けて、平成27年4月28日に感染症法が一部改正され、「蚊媒介感染症」に関する予防指針が出されました。蚊対策に国もいよいよ本気です。

デング熱の原因となるデングウイルスは、デング熱に感染した人の血を吸った蚊の体内で増え、その蚊がまた他の人の血を吸うことで感染を広げます。
日本でデングウイルスを媒介する蚊はヒトスジシマカです。ヒトスジシマカは、本州では5月頃から発生します。人気の少ない山間地より、都会での発生・吸血が多いようです。割と都会的な蚊ですね(笑)。
ヒトスジシマカの吸血行動は通常昼間です。(逆に夜を好むのがアカイエカです)。ちなみに一般的に血を吸うのはメス蚊です。産卵の栄養にするためだそうです。いやはや。

ヒトスジシマカは雑木林、墓地、公園で普通に見られ、幼虫(ボウフラ)の発生源は、古タイヤ、墓地の花立て、バケツ、空き缶などの人工的な容器が主です。
私は知らなかったのですが、実は古タイヤが国際的なヒトスジシマカの流通に重要な役割を担っていたそうです。日本から北米へ輸出された古タイヤの中の水に潜んでいたボウフラが、アメリカ東部に定着したことを契機に、またたく間にヨーロッパ、中南米、オーストラリアに広まったそうです。日本から自動車だけではなく、ボウフラも輸出していたのですね。
 
都会(もちろん東京以外でも)の、雨水がたまっていそうな場所、屋外(公園など)を歩くときは十分注意が必要です。今回はボウフラのごとくふらふらと横道にそれてしまいました。次回(こそ)その対策についてお話します。

2015年07月15日
小児集中治療科 副部長 笠井 正志

 この記事は過去に市民タイムスで紹介されたものです。特別に許可を得て掲載しています。(一部改編)

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