赤い屋根通信

第18回 お子さんの心の発達に影響する胸の変形

形成外科医が行う治療内容は、
(1)先天異常、(2)再建(外傷、悪性腫瘍切除後)、(3)整容的治療 の3つに大別されます。
それぞれの内容は独立しているわけではなく、これらのテクニックを応用し、それぞれの治療が行われます。
こども病院ではこのうち先天性外表異常の治療を主として行っております。

外表異常の最大の特徴は、「病態を認識しやすい」と言う点にあります。
障害部が表出していることは障害部位がわかりやすく、診断に至りやすいという点では利点とも言えるのですが、常に異常がわかるという点では患児およびご家族にとって心的負担を大きくする原因となります。その一方で、治療を行った場合の効果も解りやすく、治療が患児およびご家族の心の支えとして活かされていることも多く経験します。

 
「胸の形の変形」は、実は先天外表異常の中では最も発生頻度が高い疾患です。
変形の程度に差があり、また服などで隠せる部分であるため「経過観察」とされることが多い疾患なのですが、心臓や肺などの内臓器が圧迫されていることから、疲れやすさ、繰り返す肺炎などの他に、ボディーイメージの獲得に際し大きな影響を与える部分であるため、お子さんの心の発達にも影響があります。

ボディーイメージの確立は一般的には段階的な発達を示し、胸の部分である体幹が意識されるのが5歳頃となります。一般に外表異常を有するお子さんはその障害を認識する時期が早いとされています。
外表異常から獲得された負のボディーイメージの多くは治療により改善が可能なのですが、適切な時期に対処してあげる必要があり、思春期以降の対応では、治療効果に対する満足度は下がるとの報告もあります。

このような状況において重要となるのは、病態およびその治療法に対する正しい情報がお子さんやご家族に正確に伝わることです。

今回の公開講座では、お子さんの心の発達における外表異常の影響を軸に、胸の変形の成長にともなう変化および実際の治療法について説明させていただきます。

2016年7月13日
形成外科 部長 野口 昌彦

※2016年8月6日(土)公開講座「こどもの形成外科疾患と皮膚疾患」を開催致します。
当院の形成外科医と新潟県立中央病院 皮膚・排泄ケア認定看護師による講義の後、質疑応答の時間もございます。
入場無料・申込不要ですので、是非ご参加ください。(講座は終了しました)

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