1.血友病包括外来の受診のおすすめ
最近の血友病医療の進歩により、血友病治療の目標は「血友病患者の出血を予防すると同時に、血友病患者が活動的に生活を送り、非血友病患者と同様な身体的・社会的活動に健康で活動的に参加できるようにすることである。」となっています。この目標を達成するには、患者さん自身の生活スタイルに合わせた血友病製剤の選択が非常に大切になっています。
また当院は、血友病診療連携の地域中核病院に指定されています。長野県内のさまざまな病院で診療されている血友病患者に対して同一レベルの診療及び情報提供が行える診療体制を目標にしています。
さらにこれまで診療の対象となっていなかった保因者に対しても適切な情報提供と診療を提供します。
2.血友病包括外来で行われること
包括外来とは:
血友病包括外来とは、血友病の患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療を提供する外来診療です。専門医師、看護師、理学療法士など、複数の医療専門職がチームとなって患者さんの治療を担当し、定期的に病状や治療の効果を評価しながら、必要な治療や支援を提供します。
血友病性関節症について:
血友病性関節症とは、血友病の患者さんが、関節内出血が繰り返されることにより、関節に炎症が起こり、慢性的な関節障害を引き起こす症状です。血友病の患者さんの多くは、出血が繰り返されることによって、関節にダメージを受けるため、血友病性関節症を発症するリスクが高くなっています。最近では定期補充療法を受け関節出血を自覚していない患者さんの中にも一定の割合で血友病性関節症の進行を認めることがあります。
関節内出血が繰り返されることによって、関節内の骨や軟骨、靭帯などが損傷を受け、炎症が起こります。長期間繰り返されると、関節の可動域が狭くなり、関節が硬くなるため、日常生活に支障をきたすことがあります。また、関節の痛みや腫れ、赤みなどが現れ、重度の場合は関節が変形することもあります。
血友病性関節症は、定期的な補充療法や適切な運動療法、理学療法などの治療が必要です。また、関節内出血を予防するために、出血のリスクを抑える生活習慣や注意点も重要です。早期の治療や予防が重要であり、定期的な検診や治療が必要です。
関節評価と筋力評価について:
血友病患者に対する関節評価と筋力評価は、血友病性関節症の早期発見や予防、治療のために非常に重要な検査です。
関節評価では、関節の可動域、痛み、腫れ、赤みなどを観察し、関節の状態を評価します。また、関節のX線撮影や関節エコー検査、必要に応じてMRI検査などの画像検査を行うことで、関節内の炎症や変形の程度を詳しく確認することができます。
筋力評価では、血友病患者さんの筋力や筋肉量を評価します。血友病患者さんは、関節出血や関節炎症が起こりやすいため、筋力が低下することがあります。筋力評価を行うことで、筋力の低下や筋肉量の減少を早期に発見し、適切な運動療法や理学療法などの治療を行うことができます。
これらの評価を定期的に行うことで、血友病性関節症の早期発見や予防、治療につながります。また、患者さん自身も、定期的な関節評価や筋力評価の受診を心がけ、早期に問題を発見し、治療することが重要です。
成人移行医療:
血友病は先天性の遺伝性疾患であり、子供の頃から治療及び支援が必要です。成人移行期には、医療サービスや社会的支援の提供が変わり、治療や生活へのアプローチも変わってきます。
成人移行期においては、患者自身が治療や健康管理に責任を持つことが重要となります。適切な処置や早期治療、健康的な生活習慣の維持、治療費用の支払い、社会的支援の活用などが必要です。
また、成人になると、独立生活を始めたり、職場で働いたりすることが多くなります。血友病を持つ場合、職場での配慮や治療のための休暇などを取ることが必要となることもあります。そのため、医師や社会的支援機関との連携が必要となります。
成人移行期においては、患者自身が積極的に情報収集し、治療や生活に関する知識を深めることが重要です。血友病包括外来では必要な情報を提供します。
血友病保因者について:
血友病の保因者とは、血友病の原因となる遺伝子変異を持っている女性のことです。その遺伝子は2本のX染色体のうちの1本にあり、もう1本は正常な遺伝子なので血友病を発症することはありません。しかし、保因者の中にも血友病のような出血傾向が見られる人もいます。月経過多や鼻出血など出血症状があり、貧血や疲労感のため生活の質が低下している保因者がいます。
「私は保因者?」「過多月経のため貧血がある」など、困っていることにも相談に乗ります。
当院の遺伝科及び成育女性科医師(産婦人科医師)と連携して対応します。
3.血友病包括外来の受診のしかた
長野県立こども病院の電話予約に「血友病包括外来受診希望」と伝えてください。
連絡先をお伺いしますので、その後こちらからご連絡させていただき、受診日と受診までに準備していただくことをお伝えします。
4.血友病包括外来
●毎月第4水曜日 午後
12:00 来院、問診
12:30 整形外科外来、関節エコー、関節X線
13:50 リハビリテーション技術科
15:00 看護師面談
16:00 血液腫瘍科
●保因者の方の受診は担当科の予約の状況により決定します。
5.問い合わせ
長野県立こども病院・血液腫瘍科 坂下一夫
電話:0263-73-6700(代表)