成人先天性心疾患センター
長野県立こども病院は、1993年の開院以来、長野県および周辺地域の先天性心疾患診療を担ってまいりました。当院で治療を受けられた多くの患者さんが成人期を迎えられたことを受け、2021年に成人先天性心疾患センターを開設し、生涯にわたる切れ目のない診療体制を整えています。
当院では、小児期から成人期への円滑な移行を支援するとともに、再手術やカテーテル治療が必要となった際には、関連医療機関と連携しながら適切な治療を提供しています。また、県外で治療を受け成人期を迎えた患者さんの診療にも積極的に取り組んでいます。
2026年9月より、成人先天性心疾患センター長を心臓血管外科副部長 小嶋愛が務めることとなりました。先天性心疾患は生涯にわたる診療が必要な疾患です。先人の先生方が模索して助けてきた命をさらにつないでいくことが我々の使命と考え、一例一例治療方針を様々な角度から検討し、より良い治療が提供できるように努めてまいります。
当院の成人先天性心疾患センターの特色
移行期医療センターの併設
小児期に先天性心疾患の治療を受けた患者さんが、成人医療へ円滑に移行できるよう専門外来を設置しています。移行期担当医師が患者さんやご家族と相談しながら、将来の診療体制をサポートします。
信州大学医学部附属病院との連携
信州大学循環器内科と連携し、成人期の継続診療や専門治療を行っています。毎月の合同カンファレンスで症例ごとの治療方針を検討し、再手術やカテーテル治療にも対応できる体制を整えています。小児から成人まで一貫した診療を提供できることが当センターの強みです。
対象となる症例(16歳以上)の主な診療実績
| 循環器小児科(2020年1月〜2020年12月) | |
|---|---|
| 心臓カテーテル検査 | 37例 |
| カテーテル治療 | 22例 |
| 心臓血管外科(2020年4月〜2021年3月) | |
|---|---|
| 心臓大血管手術 | 6例 |
先天性心疾患弁膜症センター
小さな心臓の、大切な弁を守るために
生まれつき心臓に病気をもつ患者さん(先天性心疾患)では、心臓の中で血液の流れを整えている「弁」が、うまく開かず弁が狭くなってしまったり(狭窄)、うまく閉じずに血液が逆流してしまったりすることがあります。弁の狭窄や逆流は心臓に負担をかけ続けるため、お薬だけでは十分でなく、手術が必要になることも少なくありません。
さらに先天性心疾患の弁の手術は、心臓手術のなかでも特にむずかしい治療のひとつです。特にお子さんの弁はとても小さく、狭窄や逆流をしている弁は形も一人ひとり違います。さらに、これから体が大きくなっていくお子さんでは、なるべく「人工の弁に取り替える=人工弁置換」ではなく「ご自身の弁をうまく治す=形成する」ことが、その後の人生を大きく左右します。
長野県立こども病院では、循環器小児科と心臓血管外科がひとつのチームとなり、先天性心疾患弁膜症センターを開設しました。診断から手術、そしておとなになるまでの診療を、同じチームで一貫して担当します。
わたしたちの3つの特色
- 弁のかたちを「立体」で見る 3D心エコー図
先天性心疾患の弁の逆流は、「どのくらい狭いか、漏れているか」だけでなく、「弁のどこが、なぜどんなふうに狭いか、漏れているのか」を見きわめることが治療方針を決める鍵になります。しかし、その形は複雑なものが多く、4枚から5枚の弁が合わさる場合もあって、通常の心エコー図では判断がむずかしいことがほとんどです。
当センターでは、弁を立体的に映し出す3D心エコー図を用いて弁の状態を評価しています。当院の小児の心エコー検査は長い間国内外をリードしており、その技術は国内有数です。それによって難治性の弁疾患も良好な手術成績を収めており、これまで弁置換手術をほとんど必要としていません。 - 手術中に、心臓に直接あてる3D心エコー図
当院の大きな特色が、術中経心膜3D心エコー図です。手術で胸を開いた状態で、心臓の表面に直接プローブ(探触子)をあてて撮像する方法です。ほかの3D心エコー図、胸壁や食道から行う方法よりもはるかに鮮明な立体画像が得られます。
もちろん、手術に入る前にもおおよそのやり方をカンファレンスで相談しますが、手術室でとった3D心エコー図でさらに細かいところを詰めます。最終的に、小児科医と外科医がその場で同じ画像を見ながら、「どこを、どのように形成するか」を相談して決めることができます。この方法を用いた場合、用いなかった場合と比べて逆流をとめる弁形成術の成績が良好であったことを、当院から2025年に日本心エコー図学会誌(Journal of Echocardiography)へ報告しています。 - 弁を「取り替えない」で治す
人工の弁は、お子さんの成長に合わせて大きくなることはありません。そのため当センターでは、可能なかぎりご自身の弁を残す弁形成術を第一に考えます。弁を薄くスライシングする、自分の心臓の膜の組織で補填する、弁のすき間を縫い合わせる方法、弁の輪の大きさを整える方法、人工の腱索で弁を支える方法、テープで弁を橋渡しして縮める方法など、これまでに開発された20以上の手技を組み合わせ、成長期のお子さんの体に配慮して行います。もちろん、成人先天性心疾患の方の弁膜症手術も対象としています。直近5年の成績では、重症房室弁逆流の弁形成術18例(単心室を含む)で、15例は弁逆流を術後に軽度以下まで改善できました。(1例に遠隔期に再手術あり) なお、弁置換はありません。
対象となるご病気
先天性大動脈弁ニ尖弁の狭窄、総動脈幹症の弁狭窄や逆流、房室中隔欠損症や単心室の共通房室弁逆流、左心低形成症候群の三尖弁逆流、先天性僧帽弁逆流、エプスタイン病の三尖弁逆流など
受診をお考えの方へ
弁の狭窄や逆流を指摘されている、手術をすすめられているが迷っている、他の施設での治療方針について意見を聞きたい——そうしたご相談をお受けしています。セカンドオピニオンにも対応しております。
現在おかかりの医療機関の先生を通じて、下記までご紹介ください。
長野県立こども病院 成人先天性心疾患センター/先天性心疾患弁膜症センター
センター長の紹介
成人先天性心疾患センター/先天性心疾患弁膜症センター長小嶋 愛こじま あい
- 主な経歴
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石川県輪島市出身。2004年東京女子医科大学卒業。
2006年 東京女子医科大学 心臓血管外科入局 2007年~2009年 富山県立中央病院心臓血管外科 2011年~2013年 岐阜県総合医療センター小児心臓外科にて研修 2013年 東京女子医科大学助教 2014年 愛媛大学心臓血管呼吸器外科助教 2018年 Victor Chang Cardiac research Institute(Sydney) 研究従事 2019年 愛媛大学心臓血管外科助教 2021年1月 現職
- 所属学会・その他
- 日本外科学会専門医、日本心臓血管外科専門医、日本小児循環器学会評議員、日本胸部外科学会会員、成人先天性心疾患学会会員、日本循環器学会会員