診療科・部門

泌尿器科

泌尿器科では、腎臓、尿管、膀胱、尿道、そして精巣や陰茎などの病気を治療します。
小児泌尿器科で治療する疾患の多くは生まれつきで、胎児期や新生児期に診断されることが増えています。

主な対象疾患

水腎症、膀胱尿管逆流症、尿道下裂、尿失禁・夜尿症、二分脊椎症などによる神経因性膀胱、停留精巣、精索静脈瘤、精巣捻転症などです。

これらの中には、尿路感染症や腎機能障害、不妊の原因となるものや、夜尿症のように重大な病気とは考えられなくても患者さん、家族に精神的負担を与えるものなどさまざまな疾患があります。また、他の疾患など何らかの原因があって、尿失禁、夜尿症がおこっている場合もあります。

治療あるいは成長発達により自然に治ってしまうものもありますが、一方で早期に治療が必要な疾患、成長に伴い病態が変化する疾患もありますので、泌尿器科では、疾患の特性と患者さんの成長発達に合わせて、診断、治療、経過観察を行っています。

水腎症と言われたら・・・

水腎症って??

腎臓で作られた尿は腎盂尿管を通って膀胱に流れ込みますが、腎盂に尿がたまって膨らんだ状態のことを水腎症と言います。ほとんどの場合症状はありません。
尿の出方や勢いの異常も起こりません。
胎児期から新生児・乳児期のエコー(超音波検査)で発見される場合が多いですが、一方で、尿路感染症や、腹痛、嘔吐など胃腸炎のような症状をきっかけに検査をして、水腎症が発見されることもあります。

水腎症で何が困るのでしょう?

  • 腎臓の機能が悪くなることがある(腎臓がうまく働けない)
  • 尿路感染の誘因(流れが滞ったところに細菌がつく)
  • 腹痛、嘔吐

水腎症がみつかったら・・・

水腎症の原因、程度を確認するためにまずはエコー(超音波検査)を行います。
エコーの結果により、RI検査で左右の腎臓の働きを調べます。

治療はどうする??

水腎症の原因、水腎症の程度、腎機能、年齢、症状の有無などにより、必要であれば手術を行います。水腎症の程度は成長に伴って変化することが多いので、経過観察は必要です。

膀胱尿管逆流症

膀胱尿管逆流症って何??

普通、腎臓から膀胱への尿の流れは一方通行ですが、膀胱から尿管へ尿が逆流することを膀胱尿管逆流症といいます。尿路感染や、腎臓機能障害の原因となります。超音波検査で発見されることもあります。

尿管と膀胱の間の逆流防止のしくみが弱いために発生します。この部分が生まれつき弱い場合が多いですが、排尿障害など膀胱や尿道の異常が原因の場合もあります。

診断

尿道カテーテルから膀胱内に造影剤を注入しながらX線検査を行います。腎臓の状態を調べるため、RI検査なども行います。

治療は?

自然に治ることが比較的多いです。しかし、腎機能、尿路感染、排尿の状態などから、必要な場合には手術を行います。手術には開腹する方法と内視鏡的な方法があります。
膀胱尿管逆流症による腎機能障害は、逆流が消失した後にも進行することがあります。長期にわたる経過観察が必要です。
排尿(膀胱、尿道)の問題が膀胱尿管逆流症の発症、自然消失、腎機能障害に関与することが知られていますので、当科では排尿の状態、指導にも力を入れています。

停留精巣

停留精巣って?

精巣は元々おなかの中でできて、生まれるまでに足の付け根を通って陰嚢まで下りてくるものです。精巣が陰嚢の中に降りてこられず、鼠径部(そけいぶ)やお腹の中に留まっている状態を停留精巣と言います。ただし、6か月までは精巣が自然に陰嚢に下降することが期待できます。

停留精巣の問題

  • 不妊症
    片方でも、停留精巣を放置すると精子を作る力が低下することが知られていますが、治療で予防できる可能性があります。
  • 精巣腫瘍
    頻度は高くありません。手術後は精巣が陰嚢内にありますので、早期発見が可能です。

治療

6ヶ月をこえても精巣を陰嚢内に触れない場合は治療を考える必要があります。基本は精巣を本来の陰嚢内に固定する手術を1歳前後で行います。


2歳ぐらいになると陰嚢内に精巣を触れたり触れなかったりすることがあります。これは「移動性精巣・遊走精巣」などと呼ばれます。精巣についている筋肉の反射によるもので、検診などの緊張する時には上昇しがちです。
本人がリラックスしているときに陰嚢内に左右同じ大きさの精巣を触れるのであれば停留精巣ではなく、基本的に治療は必要ありません。

尿道下裂

尿道下裂とは

尿道が陰茎の先(亀頭)まで形成されないために、亀頭より陰茎の根本側に尿の出口がある状態です。陰茎が下向きに曲がっていることが多いです。立っておしっこをすることが難しい、将来の性交渉に支障をきたすことがあります。

治療

陰茎をまっすぐにし、尿道を作る手術を行います。手術の時期は、陰茎の状態を見ながら決めます。術後は長期的に経過観察が必要です。

二分脊椎

膀胱、尿道の動きは脳、脊髄、末梢神経を介してコントロールされていますので、二分脊椎では下部尿路(膀胱、尿道)機能障害合併がしばしば見られます。障害の程度は成長に伴い変化することもあります。
下部尿路機能障害は尿路感染症や腎臓の機能障害の原因となりますので、症状がわかりにくい乳幼児期から脳外科と連携しながら診療を行っています。

尿路感染症

小児の尿路感染症は珍しいものではありません。しかし、腎臓に炎症が起こると腎臓に障害を生じることがあります。尿路感染症を繰り返す場合や、重症化する場合、さらにオムツがとれた後の尿路感染症では、膀胱尿管逆流症や水腎症、下部尿路の異常などの原因がある場合が多いです。感染の治療後に検査をすることをお勧めします。

おしっこの悩み 尿失禁・夜尿症

子どものおしっこの漏れ、夜尿症などは、しばしば見られます。尿の漏れは便秘や便の漏れと関係することも多いです。自然に治ることも多いですが、子どもにとって精神的負担となり、学校など社会生活へ影響が及ぶ場合もあります。
初めに状態を評価し、生活指導、行動療法を行った後、夜尿症であれば薬物療法(抗利尿ホルモン薬)やアラーム療法を行います。
※小児の夜尿症、尿失禁は頻度が高く、初期治療から当科で行うのは困難ですので、上記の治療を行っても改善しない場合に受診していただきますようお願いします。

包茎

おちんちんの皮がむけない状態でも、幼児期に困ることはあまりないので、基本的には治療の必要はありません。治療が必要となるのは、亀頭包皮炎(包皮の先端を中心に赤く腫れる)を繰り返す場合や、嵌頓包茎(外からの力で包皮が剥け、戻らなくなる)、包皮が硬くなり成長してもむけない場合です。包皮翻転(包皮をストレッチ)指導や、手術療法を行います。

手術件数

術式 2021件数
腎盂形成術
腎盂皮膚瘻造設術
逆流防止術12
膀胱尿管新吻合
経尿道的尿管瘤切除術
陰嚢水腫根治術
経尿道的尿管ステント抜去術
膀胱皮膚瘻造設術
尿道下裂形成手術15
前部尿道形成術
尿道狭窄内視鏡手術
精巣捻転手術
停留精巣固定術31
腹腔鏡下性腺摘出術1
陰核形成術
尿道脱手術1
包茎手術6
創傷処置1

医師の紹介

泌尿器科 部長市野 みどりいちの みどり

将来を見すえた診療と、わかりやすい説明を心がけています。

主な経歴
松本市出身。信州大学医学部卒業。
信州大学、相沢病院、昭和伊南総合病院などに勤務。
2013年 長野県立こども病院 勤務
所属学会・その他
医学博士、日本泌尿器科学会指導医、日本小児泌尿器科学会認定医、日本排尿機能学会、二分脊椎研究会、国際禁制学会。

泌尿器科 副部長齊藤 徹一さいとう てついち

準備中です。

主な経歴
準備中です。
所属学会・その他
準備中です。
TOP