新生児マススクリーニング検査に関する実証事業(長野県事業)
長野県立こども病院が事業主体として令和4年10月から実施していた「オプショナル新生児スクリーニング検査(原発性免疫不全症及び脊髄性筋萎縮症)」については、令和6年10月から公費化に向けた国の実証事業となりました。 長野県でもこの事業に参加したことにより、この2疾患(原発性免疫不全症及び脊髄性筋萎縮症)を対象とした検査について、保護者による負担がなく無料で受けていただけます。
検査を行う対象疾患
原発性免疫不全症(PID)
“免疫”に生まれつきの異常があるために、感染症を繰り返したり、重症化してしまう病気です。代表的な病気として、Tリンパ球が無い重症複合免疫不全症 (SCID)と、Bリンパ球が無いB細胞欠損症があります。
重症複合免疫不全症 (SCID・スキッド)
適切な治療を受けなければ、亡くなる危険性が高い病気です。感染症にかかる前に診断し、治療を開始することが重要です。診断、治療をしないまま、ロタウイルスワクチンやBCGなどの生ワクチンを接種した場合、ワクチン由来の重症感染症になる危険性があります。
■主な症状
- 下痢や咳がつづく
- 体重増加不良
- ウイルス感染の重症化
- 肺炎、敗血症
■治療法
造血幹細胞移植によって、免疫機能を回復させれば完治が望めます。骨髄や臍帯血(へその緒からの血液)を移植します。
B細胞欠損症 (X連鎖無ガンマグロブリン血症など)
主に男児におこる病気で、母親からの免疫グロブリンが減り始める3~4か月ごろから発症します。早期の診断と治療により、感染症の重症化や再発を防ぐことができます。
■主な症状
- 中耳炎、副鼻腔炎を繰り返す
- 肺炎、髄膜炎、敗血症
- 気管支拡張症
■治療法
不足している抗体を補い感染症を予防するため、定期的な免疫グロブリン補充療法を行います。
脊髄性筋萎縮症(SMA)
特定の遺伝子に生まれつきの変異があるために、筋力が低下し、運動の発達が遅れたり止まったりする病気です。重症型である乳児型は出生2万人に1人前後の発症率で、生後0~6か月で発症し、呼吸困難に陥るために命の危険もある病気です。特定の遺伝子が原因ですが、潜性遺伝形式なのでご病気の方がいない家系でも発症する可能性があります。近年、画期的な治療薬が開発されて、早期に発見・治療を開始すれば症状の進行を抑えたり軽減することができるようになりました。この治療の効果を十分に引き出すためには、少しでも早く治療を開始することが必要です。
■主な症状
- 哺乳不良、誤嚥
- 弱い泣き声、呼吸が浅い
- 筋力低下(首がすわらない、お座りができない)
■治療法
新しく開発された薬により、変異のある遺伝子の機能を補います。リハビリテーションで運動機能を促します。
検査の申込方法
検査申込
出産される医療機関・分娩施設で、お子様の出生時に申込をしてください。
※各出産医療機関において検査に関する説明を受けた後、同意書(新生児マススクリーニング検査に関する実証事業への参加についての同意書)に必要事項を記入してください。
検査費用
実証事業に参加いただいた方は、追加の費用なし(公費負担)で原発性免疫不全症 (重症複合免疫不全症(SCID)、B細胞欠損症)と脊髄性筋萎縮症(SMA)を対象とした検査 が受けられます。
里帰り分娩等で長野県外で出産した場合の自費検査
長野県在住の保護者で、長野県外の本検査の実証事業を未実施の地域で出産された場合で保護者が本検査を希望される場合は、出生後2か月以内のお子様であれば自費での検査が可能です。
長野県立こども病院「拡大スクリーニング外来」へお問い合わせください。
(対象疾患:原発性免疫不全症及び脊髄性筋萎縮症の2疾患)
※上記の検査費用のほか採血管理料2,800円がかかります。
長野県内の市町村による検査費用の補助について
■安曇野市
令和7年1月1日から本検査費用の助成制度が設けられています。
検査について
採血について
生後4~6日目に、かかとからろ紙に採血します。(先天性代謝異常等検査で採血した検体をそのまま使います。余分な採血はありません。)
検査結果について
検査結果は、採血後2週間前後に出ます。
正常な場合
1か月健診の時などに出生医療機関を通して結果をお渡しします。
再検査、精密検査が必要な場合
正常な結果以外の場合は、出生医療機関から直ちにご連絡させていただき、診断・治療機関をご紹介いたします。
病気が発見された場合の医療体制
新生児マススクリーニング検査に関する情報のこども家庭科学研究但馬班への報告と個人情報の保護
脊髄性筋萎縮症(SMA)と重症複合免疫不全症(SCID)について、新生児マススクリーニング検査の有効性を検証するため、検査が実施された小児については個人情報の保護に十分に配慮しながら、新生児マススクリーニング検査の検査数、陽性者数、精密検査の結果(疾患名や患者数)など、個人が特定されないデータが、こども家庭庁及びこども家庭庁の研究班に報告されます。
この実証事業で得られた情報は、当該目的以外で使用することはありません。
また、調査研究の結果が公表される際には、統計的に処理され、個人が特定されるかたちで公表されることはありません。
留意事項
- 新生児マススクリーニング検査によって、すべての脊髄性筋萎縮症(原発性免疫不全症が見つかるわけではありません。
- 脊髄性筋萎縮症や重症複合免疫不全症、B細胞欠損症以外に、免疫不全を生じる疾患等が見つかる可能性があります。
- この検査はスクリーニング検査です。精密検査が必要と判断された場合でも、精密検査の結果、“病気ではない”と診断される場合もあります。
リンク
原発性免疫不全症(PID)とは
詳細はこちらをご覧ください
PID新生児スクリーニングコンソーシアム
脊髄性筋萎縮症(SMA)とは
詳細はこちらをご覧ください
SMA(脊髄性筋委縮症)家族の会